●故人が日ごろ食べていたものを用意する
末期の水や死化粧などは仏式と同じです。床は「北枕」にする家庭もありますが,とくにこだわりません。遺体を安置した部屋は正式にはしめ縄を張りますが,最近は省略する場合が多いようです。
枕飾りには,白木の八足の案(八脚の小机)を用意します。そこに榊とろうそく,三方には塩,洗い米,水と御神酒,そして故人が生前に常食としていた食べ物(常饌)を置きます。常饌には魚などの生ぐさものでもさしつかえありません。八足の案の上には,そのほかに小袋に入れた刃物を守り刀として置きます。
屏風がある場合は,枕飾りのうしろに上下を逆にして立てておきます。
●枕直しのあと神社へ連絡する
枕飾りを整えることを神式では「枕直し」と言い,枕直しを終えたあと,故人が氏子となっていた神社へ連絡します。以前は神社への連絡は,遺族が代理人を立てて知らせるのがしきたりとなっていましたが,今日では電話での連絡でかまいません。連絡を受けた神職は,「帰幽奉告の儀」といって氏子の死亡を遺族にかわって神に奉告します。
−北枕の習慣は,お釈迦さまの「涅槃」にならったもの
仏式では,湯灌後の遺体は北向きに寝かせますが,これは北枕といって,お釈迦さまが一切の苦や束縛から解き放たれた最高の境地「涅槃」にはいられたときの頭北面西の姿にならったものといわれています。
部屋の都合で北枕にできないときは西を枕にします。これは西方にあるとされる極楽浄土,すなわち西方浄土の仏教思想に基づいているようです。
神式の場合も仏式と同じく北を枕にしますが,こちらはかつての神仏混淆の時代に仏教思想から影響を受けたためであろうと思われます。キリスト教式およびそのほかの宗教では,原則的には寝かせる方向にとくに決まりはありません。
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●十字架を故人の手にもたせる
カトリックの場合は「終油の秘跡」の儀式が臨終前に神父によって行われます。これは死を前にした信者が,これまでの罪の許しを求め,神の恩恵を賜るための儀式で,神父が信者の額と両手に聖油を塗り,パンを一切れ与えます。プロテスタントでは信者がまだ意識のあるうちに,牧師が「聖餐式」を行います。パンとブドウ酒を信者に与え,聖書の一節が朗読されます。
仏式で行うように遺体に湯灌を行い,死化粧をするのは,キリスト教式でも同じです。またプロテスタントでは末期の水をとることも多いようです。
遺体は床に安置しますが,このときに決まったならわしはありませんが,故人の手に十字架(カトリックの場合はロザリオ)をもたせたりすることが多いようです。
枕元には,十字架を立て,ろうそくを灯し,白い花などを飾り,故人の愛用した聖書を置きます。宗派によっては香をたくこともあります。
●故人の愛用した服を着せて納棺する
納棺までは,遺体は床に安置しておきます。
納棺は,正式には牧師(カトリックの場合は神父)が祈りを捧げるなかで行われますが,実際には遺族だけで行うことが多くなっています。
仏式で言う「死に装束」は,キリスト教式ではありません。遺体に着せる服は自由ですから,納棺の際は,故人が愛用していた服を着せたらよいでしょう。
遺体のまわりは,白い生花で埋め,棺のふたを閉めたら黒い布でおおいます。
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